札幌円山 〜原始林の四季〜

　その男は下山中にとつぜん現れた。なんとなく人の気配がしたので振り向くと、後方三十メートルくらいのところにその男はいた。水色っぽい上着を着ている。

　けっこう速いテンポで歩いていたのですぐに自分を追い越して行くだろうと思っていたのだが、その男はなかなか近づいてこない。僕は少し歩いて道幅が広くなっているところで立ち止まると、ちょうどそこにゴジュウカラが飛んできたのでそれを眺めていた。もちろん、そこで追い越してもらうためだ。しかしその男は僕の後方五メートルくらいで立ち止まり、いくら待っても追い越そうとはしない。

　僕が歩き出すと、その男も歩き出した。なんだか不気味なので、また道幅が少し広くなったところで立ち止まり、追い越してもらおうと僕は後ろを振り向く。するとその男はいきなり走り出し、こちらへ向って来た。

「ひさしぶりだねえ」とはるさんは笑いながら言った。夏に一緒に海水浴に行って以来、いそがしくて会っていなかったので、もう二ヵ月半ぶりくらいだ。暖かかったので動物園に入って、ビールを飲んで帰ってきた。

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