初冬の曇り空の日に
空はすっかりと雲におおわれて、雪が降ったり止んだりしていた。気温はちょうど零度くらいだったと思う。僕は三時半に近所の歯科医院にいく予定になっていたので、傘をさして家を出た。外は薄暗く、手も耳も刺すように冷たかった。雪はまだそれほど積もってはいなくて、道路のところどころにシャーベット状の水たまりがある。僕はそれを避けるようにしながら、少し急いで歩いていた。
歯科医院の入っているビルの近くまできたとき、道路に面したマンションからひとりの子供が出てきた。小学校の低学年くらいのおとなしそうな男の子で、手にはサーフボードのような形をした大きなものを抱えている。ちょうど男の子の身長より少し小さいくらいの大きさがあった。そのとき、目の前の信号が赤にかわったので、僕とその男の子は並んで信号を待つことになった。
そのサーフボードのようなものは軽い合成樹脂かなにかでできているようで、取っ手のような黒いパーツが二組ついている。もしかするとこれは新型のソリなのかなと思ったとき、無意識に僕は子供に話しかけていた。
「これってソリ?」
「うん」と男の子は恥ずかしそうにしながらもにこにこして頷いた。
「いいソリだね」と僕が言うと、うれしそうな顔で僕を見あげた。
「コストコでね、買ってもらったの」と男の子は言った。そして、両腕に抱えているソリをぎゅっと胸に押しつけた。
男の子はもっと何か言いたそうな顔をしていたが、それを口に出す前に信号は青になった。雪がまた降りはじめた。男の子は両腕で大事そうにソリを抱えながら、早歩きで山の方へと向かっていった。
と、酒を飲みながらテキトーに書いてみる。今週月曜日の出来事でした。
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